• 更新日 : 2023年8月18日

領収書の保管期間は原則5~7年!事業者のケース別に解説

領収書の保管期間は原則5~7年!事業者のケース別に解説

事業をしていくうえで、頻繁に受け取る領収書ですが、どれくらいの期間にわたり保存する必要があるのでしょうか。ここでは、法律で定められているさまざまな場合の領収書の保存期間について解説します。

領収書の保管が必要なのはなぜ?

領収書とは、サービスや商品の代金を受け取る際に発行する書類です。また、領収書は証憑(しょうひょう)書類と呼ばれており、金銭の受け渡しの証明となります。証憑書類は、法律で保存期間が決められているため、勝手な判断で処分することはできません。その保存期間は法人と個人事業主とでは異なり、また、仕入れ税額控除の適用を受けている場合は保存期間に注意する必要があります。

領収書の保管期間:法人は原則7年

法人税法においては、会計帳簿とともに領収書をはじめとする証憑について、確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保存が義務付けられています。
ただし、青色繰越欠損金が生じた事業年度や、白色申告をした事業年度で災害損失金額が生じた場合には、10年間の保管が必要となります。

参考:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁

会社法では会計帳簿については10年間の保存が必要とされますが、領収書などの書類については会社法に定めがないため、法人税法のとおりとなります。

参考:帳簿書類等の保存期間及び保存方法 | 中小企業基盤整備機構

領収書の保管期間:個人事業主は5年か7年

個人事業主については、青色申告かそうでないかによって異なります。それぞれ見てみましょう。

白色申告の場合は原則5年

所得税法では、白色申告者についても記録保存制度があります。不動産所得、事業所得、山林所得のある人は領収書などの書類は5年間保存する必要があります。

また、前々年分の業務に係る雑所得において年間収入が300万円を超える人は、領収書等を保管する必要があります。

参考:個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について|国税庁

青色申告の場合は原則7年

所得税法では青色申告者の書類、領収書については7年間の保存を求めています。青色申告者の現金預金取引等関係書類である領収書などについては7年、その他の書類については5年の保存を求めています。

ただし、前々年分の所得が300万円以下の場合については領収書の保存期間は5年間となります。

参考:記帳や帳簿等保存・青色申告|国税庁

繰越欠損金の控除を受ける場合は保存期間が10年に

法人における領収書の保存期間は7年と紹介しましたが、繰越欠損金の控除の適用を受ける場合は、10年に延長されます。

繰越欠損金の控除とは、税務申告を行う年度の過去10年以内に生じた赤字額について利益から差し引くことができる制度です。赤字の根拠を示す書類として、当時の領収書が必要になります。繰越欠損金の控除の概要や改正点について解説します。

繰越欠損金の控除とは

繰越欠損金の控除とは、申告書を提出する年度以前10年以内に生じた赤字について、決算書を提出する事業年度に持ち越す仕組みです。過去の赤字を利益から控除できるため、節税につながることが利点です。

繰越欠損金の制度趣旨は、事業年度間の税負担の平準化にあります。利益の金額による税負担の変動が少なく、財務基盤の健全化や安定化に寄与します。

繰越欠損金の適用条件や期限、限度額など詳しい情報については、下記記事を参考ください。

欠損金の繰越控除の具体例

繰越金欠損の控除を使うことで、申告書を提出する事業年度の利益に与える影響をみてみましょう。

ある焼き肉店では前年度の赤字が20万円でした。この年度の課税所得はゼロ円で、赤字は翌年に繰り越します。翌年100万円の黒字が出た場合、前年の赤字と今年の利益を相殺し、100万円-20万円=80万円を所得だととらえるのです。

なお、欠損金の繰越控除には、古い年度の赤字から充当するというルールがあります。複数年にわたって損失が出ていた場合、利益額によっては直近の赤字は対象外です。とはいえ、一度に1年分しか控除を受けられないわけではありません。

法改正によって領収書の保存期間が10年に

繰越欠損金の控除は、元々決算書を提出する事業年度の開始日から起算して、以前9年間にわたって赤字を繰り延べる制度でした。2016年の税制改正によって、2018年4月1日以降に開始する事業年度において、10年間に延長されています。

会社法では会計帳簿および事業に関する重要な資料、決算書類および付属明細書を10年間保存することを求めています。

つまり、決算書や総勘定元帳などと領収書の保管期間は同様です。会計関連の書類は10年間保存する形で統一すると覚えておくと分かりやすいでしょう。

保管が必要な領収書は、発行日ではなく、申告書の提出期限から起算して10年です。繰越控除の適用を受ける可能性を見越して、原則である7年間を過ぎても、廃棄してしまわぬよう留意しましょう。

仕入税額控除を受けている場合

消費税の仕入れ税額控除とは、仕入れや流通の段階で消費税を何重にも課税されるのを防ぐための制度で、仕入れにかかった消費税を、納付すべき消費税から控除することができます。

この消費税の仕入れ税額控除の適用を受けている場合は、消費税法で仕入れに関する領収書の7年間の保存が義務付けられています。(6、7年目においては、帳簿または請求書や領収書などのどちらか一方の保存でも可能)白色申告や一部の青色申告者は、所得税法で領収書の保存期間が5年間となっていますが、保存期間が長い法律が優先されますので、所得税の仕入れ税額控除の適用を受ける場合には、7年間にわたり帳簿と請求書や領収書などの保存義務があります。

請求書や領収書などがないと、仕入れ税額控除が受けられない場合もありますので、注意が必要です。なお、領収書の金額が30,000円未満の場合や、やむを得ず請求書を受領できなかった場合には保存義務がありません。

領収書の保存方法は?

領収書の保存方法を解説します。

紙の領収書を受領した場合:紙か電子データで保存

紙の領収書を受け取った場合には、そのまま紙で保存する方法と電子データにしてスキャナ保存する方法の2つがあります。

紙の領収書を保存する場合には、その書類の量にもよりますが、会計帳簿と対応して確認できるように保存しましょう。紙に貼り付けたり、封筒や箱で小分けにしたりして保存する方法などがありますが、保存期間にわたって確実に保存できれば問題はありません。

電子データで保存する場合には、紙の領収書をそれぞれスキャンし、電子データにしたうえで保存します。電子保存の方法は、以下で解説するとおりです。

電子領収書を受領した場合:電子保存

領収書を電子保存する場合には、社内のファイルサーバーやクラウドストレージ、会計システムなどを利用します。領収書の電子保存にあたっては、電子帳簿保存法により以下の保存要件が定められています。電子取引による電子データを保存する場合と、紙をスキャナで取り込んで電子データとして保存する場合とでは要件が異なりますのでご注意ください。

  • 真実性の確保 :保存された電子データが改ざんされていないことを示す
  • 可視性の確保 :保存されたデータを検索できるようにする

以上の要件を満たすよう、適切な保存方法を選びましょう。
なお、電子帳簿保存法については下記記事でも解説しています。

保管期間終了後の領収書の処分方法は?

保管期間終了後の領収書の処分方法を解説します。
まず、紙の領収書を処分する際には、燃えるゴミとしての廃棄は避けなければなりません。もし悪意のある人がいた場合には、ゴミ袋を開けられ、中身を見られてしまうおそれがあるからです。

より安全な処分方法は、シュレッダーで裁断したうえで廃棄することですが、さらに安全な方法として、業者による文書溶解サービスを利用するとよいでしょう。

電子データの領収書を処分する場合には、ファイルサーバーやクラウドストレージ、会計システムが提供する方法に従って削除しましょう。

領収書は決められた期間、保存しよう

帳簿書類に属する領収書は、法人なら7年間、個人事業主なら白色申告は5年間、青色申告なら7年間の保存期間が定められています。紙の場合は紙の量に見合った方法で、電子データの場合は電子帳簿保存法に従い適切な方法で確実に保存するよう心がけましょう。

よくある質問

法人が領収書を保管しなければならない期間は?

法人の領収書の保存期間は原則として7年間です。詳しくはこちらをご覧ください。

個人事業主が領収書を保管しなければならない期間は?

個人事業主の領収書の保存期間は、原則として白色申告なら5年間、青色申告なら7年間です。詳しくはこちらをご覧ください。


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