• 更新日 : 2022年10月14日

領収書の二重発行とは?

領収書の二重発行とは?

金銭や有価証券に関する取引が行われたことを示す「領収書」は、保存することが義務付けられています。なぜなら、その取引に関するトラブルが起きたときに証拠となる、税務上の「証憑書類」だからです。そのため、領収書の二重発行は、その不正使用の可能性を生み出します。

ここでは、領収書の不正使用の際のペナルティや二重発行に当たる事例について解説します。

「領収書」は税務上の証憑書類ですから、ある取引に関して、何度も領収書を発行することは、領収書の不正使用につながります。二重発行された領収書を受け取った側は、架空の取引の売上を立てたり、経費を余分に計上したりできるからです。

例えば、領収書の紛失などの理由で再発行が必要なケースもあるかもしれませんが、依頼する側も発行する側も、不正使用を疑われる可能性を踏まえて、十分に注意しなければなりません。

不正使用の場合のペナルティは?

上述のような理由から、領収書を不正に使用することは脱税行為とみなされます。そのため、税務調査で、領収書の不正使用を指摘された場合には、ペナルティが科されることになります。

延滞税等の罰科金が発生する

たとえわずかな金額であっても、税務署に領収書の不正使用が指摘された場合、本来、計上すべき額との差額を踏まえて、法人税、消費税、法人市民税、事業税が加算されるうえに、延滞税が課されます。それだけでなく、税務署から注意を払うべき会社、または個人事業主であると睨まれ、定期的に税務調査を受けることになる可能性が高いでしょう。

さらに、税務上の問題だけではありません。会社員が経費を水増しするために、軽い気持ちで二重発行された領収書を使用したことが、会社内で明らかになった場合には、ビジネスパーソンとしての信頼を損なってしまうことになり、その後の仕事に大きな影響が出てしまいます。

発行側が私文書偽造罪に問われる可能性もある

一方で、領収書を発行する側が、共犯であると疑われた場合には、有印私文書偽造罪に問われる可能性があります。有印私文書偽造罪とみなされると、領収書の二重発行は、「他人の印章・署名を使用」して、権利や義務、事実証明に関する文書を偽造するという犯罪行為になります。

私文書は、国や地方公共団体、公務員などが作成する公文書よりも公共性が低いため、公文書偽造罪よりも法定刑は低くなっています。ただ、それでも3カ月以上5年以下の懲役になる恐れがあります。

二重発行の領収書を作らないためには

領収書を発行する側は、クライアントから再発行を依頼された場合でも、二重発行にならないように慎重に対応することが必要です。

領収書の再発行をする際の注意事項

領収書の再発行を依頼されたときには、以下のような点に注意して行いましょう。

再発行の依頼主、再発行の依頼理由、再発行の依頼日などを記録する
以前に発行した領収書がまだ残っている場合は、返却してもらうように依頼する
領収書の紛失が理由で、返却が難しい場合は、その旨も記録する
以前に発行している領収書のコピーの転用ではなく、新しく領収書を作る

これらの記録を必ず残して、事後でも経緯が分かるようにしておくことです。

領収書として扱われる「受領書」をすでに発行しているとき

一般的な納品書は、金銭を受け取ったかどうかが不明なので、領収書の代わりにはなりません。ただし、代引きの「納品受領書」や銀行振込の「振込受領書」「払込受領書」などは、支払いや振込みの証明として、領収書として扱われます。

このとき、代引きで商品を販売したり、商品の代金を銀行振込で受け取ったりした側が、あらためて領収書を発行すると、二重発行になるのではないかと思われるかもしれません。明確なルールはないのですが、「運送会社(または銀行)を通して代金を受け取りました」という旨を記載しておくと、少なくとも故意に二重発行をしたと疑われる可能性はないと考えられます。

まとめ

このように、領収書の二重発行は、発行する側も受け取った側も、さまざまな罪に問われる可能性があります。双方ともに故意の二重発行はしてはいけませんが、正しい知識を身につけて、疑われることのないように注意することも必要です。


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